アルゼンチンアリは南米が原産だが、人間の貿易に便乗して世界各地に侵入したアリだ。日本では、1993年に広島県廿日市市ではじめて見つかって以来、西日本の沿岸地域を中心に分布を拡大している。
アルゼンチンアリは協力しあう(ケンカしない)たくさんの巣が集まってスーパーコロニーとよばれる巨大なコロニーをつくる。今回、私たちは日本各地に分布するアルゼンチンアリ同士の関係を調べることにした。産地がちがうアルゼンチンアリを実験室で出会わせて行動を観察したところ、お互いに協力しない(ケンカする)別々のスーパーコロニーが4つあることがわかった。アリがお互いを仲間かどうか見分けるために使う体表炭化水素という物質を調べたところ、4つのスーパーコロニーごとに体表炭化水素に違いがあることも確認された。さらに、遺伝子を調べた結果、やはり4つのスーパーコロニーごとに違いがあり、それぞれのスーパーコロニーは別々の侵入起源をもつ可能性が高いことがわかった。
国内での4つのスーパーコロニーの分布(2005年時点)。違う色は別々のスーパーコロニーを示している。
4つのスーパーコロニーのうち1つは日本国内のいくつもの離れた場所に分布していた。これは、もともと1つのコロニーに属していたアリが貨物などにまぎれて長距離を移動して離れ離れになっても、また出会う機会があればお互いを仲間だと認識できるということを意味している。このスーパーコロニーは、今はまだ分布が限られているが、このまま分布を拡大しつづけたら、いくつもの県にまたがる巨大スーパーコロニーに成長してしまう可能性があるのだ!!
一方で、その他3つのスーパーコロニーは神戸港にだけ分布していて,海輸によって海外から直接侵入した可能性が高いことがわかった。港への侵入はやはり要注意のようだ。
※ アリのイラストは砂村画伯によるヘッポコ作品です(汗)
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